建築用墨汁と書道用墨汁の違い
皆さんこんにちは、建築部玉城です
4月も終わりに近づき気温も上がり始め今年も熱中症の危険が迫る時期になってきました。
またこれから梅雨も始まりますので今のうちに梅雨に向けての準備を始めてもいいかもしれませんね。
さて今回は年度初めということで基礎に立ち返ってみようと思いまして、
墨付けを行う際に必要な墨つぼに使用する墨汁について書いていきます。
墨つぼに使用する墨汁ですがある程度知識のある方やホームセンター等によく行く方を除くと一般的なのは書道に使用する墨汁だと思います。

どれも一緒じゃないの?と思うかもしれませんが書道用の墨汁を使用してしまうとトラブルから損をしてしまいます。
では建築用の墨汁と書道用の墨汁では何が違うかを比較していきます
1.成分の比較
外見は同じ「黒い液体」ですが成分は使用目的に合わせて異なっています。
・書道用の墨汁
顔料 カーボンブラック(油煙・松煙)
結合剤 膠(にかわ)または合成樹脂
添加剤 防腐剤・香料・塩化カルシウム等
乾燥後の性質 紙に定着(再溶解しにくい)
空気との接触 空気に触れると固まりやすい
耐水性 紙に定着後は耐水性あり
塩分 膠のゲル化防止の為塩化カルシウムを含む
書道用墨汁の原材料は、黒色顔料の煤(カーボンブラック)とそれを紙に定着させる膠(にかわ)が基本です。
膠は動物の骨や皮などのコラーゲンを煮詰めて精製したものであり煤の粒子同士をつなぎとめて紙の繊維に墨を固着させる接着剤の役割をします。
現代では、腐敗しにくく低温でも凝固しにくいポリビニルアルコール(PVA)などの合成樹脂が膠の代わりに使われることが増えています。
膠についてはならや本舗さんのページにて詳しく書かれていますので気になる方はそちらをご覧ください。

・建築用墨汁
顔料 カーボンブラック
結合剤 エチレングリコール等(アルコール系溶媒)
添加剤 防腐剤・不凍成分等
乾燥後の性質 乾燥しても水を加えれば元に戻る
空気との接触 空気に触れても固まらない
耐水性 耐水性あり(雨天用もあり)
塩分 無塩タイプが主流(金属さび・器具腐食防止)
建築用墨汁の最大の特徴は、書道用の膠・合成樹脂の代わりにエチレングリコール(塗料の溶媒として使われるアルコールの一種)が配合されている点です。
またカーボンブラックの他にポリビニルアルコール(PVA)を含む製品もあります
エチレングリコールは乾燥後も水を加えれば元の状態に戻る性質をもつため、墨壺のつぼ糸やつぼ綿が固まらず長期間使用できます。
また凍結しにくい性質があり、寒冷地や冬季の現場でも安定した使用が可能です。

2.書道用墨汁で墨付けを行った場合の問題点
書道用墨汁を墨壺に使うと以下のようなトラブルが生じます。
① 墨壺の糸・綿が固まる(最大の問題)
書道用墨汁に含まれる膠(または合成樹脂)は、空気に触れることで乾燥・固化する性質があります。
紙に美しい文字を定着させるために設計されたこの特性が建築現場で、
はそのまま「墨壺のつぼ糸・つぼ綿を固める」問題を引き起こします。
一度固まったつぼ糸は水で溶かすことができないので糸や綿の交換が必要になるか、
墨つぼ本体を交換する必要がある為再度購入する費用が掛かってしまいます。
② 乾燥が遅く、現場作業に支障をきたす
書道用墨汁の一部製品(特に膠と塩化マグネシウムを使ったもの)は乾燥が非常に遅い性質があります。
墨運堂の技術資料によりますと「乾燥が遅く、一度乾いても梅雨時には空気中の水分を吸ってべたつく」性質があるとされています。
建築現場では次工程への移行を素早く行う必要があるため乾燥の遅い墨汁は作業効率を大きく下げてしまいます。
③ 濡れた材料ではにじむ
書道用墨汁は紙への定着を前提として設計されており、雨で濡れた木材やコンクリート面での使用は想定されていません。
濡れた面では墨がにじみ鮮明な線を引くことができません。
建築工事では雨天後や湿気の多い状況での作業も多くある為書道用墨汁では困難な場面が増えてしまいます。
④ 金属部品が錆びる可能性がある
書道用墨汁には膠のゲル化防止のため塩化カルシウムなどの塩分を含む製品があります。
墨付け作業は鉄骨に行うこともあり、塩分を含む液体が長期間触れると腐食・錆の原因となります。
シンワ測定株式会社の公式サイトにも墨つぼに墨つぼ用の墨汁以外を使用しないでくださいの注意書きが載っています。

3.建築用墨汁の種類と用途
建築用墨汁はカラーや機能によって複数の種類があり、職種・用途に応じて使い分けます。
現場では「どの業種が引いた線か」を色で区別することが多いです。
・黒色 一般的な色で主に使用されます。
・朱色(赤)、黄色、青 設備工事や電気工事など業者が主に使用し各業者それぞれが区別するために使用します。
・白色 暗色の材料(アスファルトや黒鉄板)への墨付けに使用します。チタン系顔料を使用している為に被覆力が強く油板にも対応しています。
・蛍光色 薄暗い場所でも視認しやすいタイプとなっています。
また色以外にも機能別で種類があり、一般的に使用される標準タイプの他に雨天用の墨液は、
成分の粒子を細かくしている為に水に流されにくく、雨でぬれた面にも滲まずに線が打てます。

まとめ
建築用墨汁と書道用墨汁は、同じ「黒い液体」という外見に反して、成分が根本的に異なる部分があります。
書道用の墨汁は紙への定着を優先した設計であるため、空気に触れると固化してしまい墨壺の糸を詰まらせてしまいます。
建築用墨汁はエチレングリコールを主な溶媒とすることで乾いても水で復元できる性質がある為墨壺での長期使用に適しており、
雨天用など現場の使用用途に合わせた種類が揃っています。
「書道用でも墨汁だし一緒だろう」という判断で使用してしまうと思わぬ所で大きな損につながってしまいます。
墨付け作業に使用する墨汁は必ず建築用の墨汁を使用するようにしましょう!
以上、建築部玉城でした













































