中央消防署の現場から – 株式会社東恩納組

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2025年6月11日建築部

中央消防署の現場から

皆さんこんにちは、建築部玉城です。

今回は今現在作業している防火水槽の設置で満水試験を行っていますので防火水槽での満水試験について調べてみました。

 

防火水槽の満水試験について知っておくべきこと

防火設備の適切な維持管理は、建物の安全性確保において極めて重要な要素です。

その中でも防火水槽の満水試験は、消防設備の信頼性を保つための基本的な点検項目として位置づけられています。

 

満水試験とは何か

防火水槽の満水試験とは防火水槽が設計通りの水量を確実に貯水できるかどうかを確認するための検査です。

この試験では、水槽を満水状態にして、漏水の有無や構造的な問題がないかを点検します。

具体的には、防火水槽に水を満たし、一定時間経過後の水位変化を測定することで水槽の密閉性能や構造的な健全性を評価します。

試験中は水位の変化だけでなく、水槽周辺の地面や壁面に漏水の痕跡がないかも併せて確認します。

満水試験は消防法に基づく法定点検の一部として実施されるもので、防火水槽の機能維持には欠かせない重要な検査項目です。

通常、専門の消防設備点検業者によって実施され、その結果は点検記録として保管されます。

また、新設の防火水槽においては設置工事完了後の性能確認としても満水試験が実施されます。

この場合は設計仕様通りの性能が発揮されているかを確認し、消防署への届出や検査において重要な資料となります。

 

満水試験の必要性

防火水槽の満水試験が必要な理由は、主に法的要件と安全性確保の観点から説明できます。

まず法的な側面では、消防法第17条の3の3に基づく消防用設備等の点検制度において、防火水槽が消防用設備等に該当する場合は定期的な点検が義務付けられています。

この法定点検において満水試験は水槽の機能確認として重要な位置を占めています。点検結果の報告を怠った場合、消防法第44条第11号により30万円以下の罰金または拘留の対象となる可能性があります。

安全性の観点では、火災発生時に防火水槽が期待される機能を発揮できなければ初期消火や消防活動に重大な支障をきたします。

特に高層建築物や大規模施設では公設消防の到着前に自衛消防組織による初期消火が極めて重要であり、そのための水源確保は建物の安全性に直結します。

経済的な観点からも、定期的な満水試験により小さな不具合を早期発見することで、大規模な修繕工事を避けることができます。

漏水による水道料金の無駄遣いを防ぐ効果もあります。

さらに、建物管理者としての責任履行という観点も重要です。

適切な点検記録の保管により、万が一の事故発生時に管理責任を明確に示すことができ法的なリスクを軽減できます。

 

満水試験を実施しないとどんな不具合が起こるか

満水試験を実施しないことで生じる可能性のある不具合は、軽微なものから致命的なものまで多岐にわたります。

最も深刻な問題は、火災発生時の消火用水不足です。防火水槽に漏水があり気づかないまま放置していると、いざという時に必要な水量を確保できません。

特に夜間や休日の火災ではこの問題が致命的な結果を招く可能性があります。消防ポンプ車が到着しても水源が不足していれば効果的な消火活動ができません。

構造的な問題の進行も深刻な懸念事項であり、小さなクラックや漏水を放置すると時間の経過とともに損傷が拡大し、

最終的には水槽の全面的な改修や交換が必要になる場合があります。特に地下式の防火水槽では、周辺地盤の沈下や建物基礎への影響も考えられます。

法的なリスクとしては、消防法違反による罰則適用の可能性があり、定期点検を怠った場合30万円以下の罰金または拘留の対象となる可能性があります。

満水試験の手順

防火水槽の満水試験は安全性と正確性を確保するため、定められた手順に従って実施する必要があります。

満水作業では、水槽に水を徐々に注入していきます。

急激な注水は水槽に過大な応力を与える可能性があるため適切な速度で実施し、満水状態に達したら水位を正確に測定し記録します。

測定期間中は定期的に水位を測定し、変化を記録します。

通常は24時間程度の測定期間を設けますが水槽の規模や状況に応じて調整します。同時に水槽周辺の漏水の有無を目視で確認し、異常があれば詳細に記録します。

試験完了後は測定データを分析し、許容範囲内の水位変化かどうかを判定します。

問題がなければ試験合格として記録し、異常が発見された場合は詳細な調査と対策を検討します。

最後に試験結果を適切に記録し、関係書類を整備します。

この記録は法定点検の証拠書類として重要であり、次回点検時の参考資料としても活用されます。

以下が水位測定時の様子になります。

一次水位測定時の様子

一次確認後注水状況

注水完了

二次水位測定の様子

二次確認後注水状況

注水完了

製品のコンクリートがある程度水を吸い込むため、水位確認・注水作業を水位が安定するまで繰り返し、安定した後にそこから24時間で水位がどれだけ変わるかの本試験に移ります。

実際に測定しているとコンクリートが思っている以上に水を吸い込んでいることに驚きがありました。

 

まとめ

防火水槽の満水試験は、建物の防火安全性を確保するための重要な点検項目です。

法的義務であると同時に、実際の火災時における確実な水源確保のための技術的要件でもあります。

小さな問題の早期発見と対策が重要となる為しっかりと注視して観測していきます。