【スリット】 – 株式会社東恩納組

STAFF BLOG

スタッフブログ

2016年1月14日建築部

【スリット】

皆さんお疲れ様です。工事部の伊地です。
年も明け新しい一年が始まりましたがしっかり体調管理してますか?
今年も事故や怪我など無いようにがんばっていきましょう。
今回は僕の現場でこのような資材を扱いました。
ファイル 808-1.jpg
最初に見かけたとき何だろうと思い、調べてみたところ構造スリット又
耐震スリットと言う資材でした。
今日はこのスリットを色々調べたので、スリットを取り付ける意味を投稿したいと思います。
(耐震スリット)
概要;RC建物の多くは「耐震スリット」と呼ばれる緩衝材が入っています。これは一体なぜでしょう??
RC建物に耐震スリットを設けるという概念は、
新耐震設計法が1981年に施行されて以降決められました。
当時それ迄は耐震スリットを設けないRC建物が設計されてきたが、
大地震時に設計者が予測していなかった破壊や、腰壁及び垂壁が取付く
柱でせん断破壊が多く起きたのです。
これにより、腰壁や垂壁、袖壁のようないわゆる雑壁も
「きちんと柱や梁の断面に評価するべきだ」という認識が広がりました。
しかし、建物の形のまま雑壁を評価して計算すると、ある箇所に応力が
集中したり、先程書いたように柱の長さが短くなる為に、せん断破壊が
起きやすくなるという現象が発生します。
なぜ、雑壁が取り付くことで応力が集中するのかというと、部材の
剛性が関係しています。
部材の剛性は、材料定数Eと断面形状によって決まります。
下図のように、一般的な正方形の柱と比べて、正方形の柱+壁では、
X方向に力が作用した場合、明らかに後者の方が断面二次モーメントが
大きくなります。
ファイル 808-2.bmp

また、雑壁が取り付くことで、柱長さが短くなり、せん断破壊が起きやすなる原因ですが、これも簡単に説明がつきます。
下図のように垂壁、コシ壁が取り付くと、柱は梁迄の端部ではなく、
壁の端部まで拘束されていると考えられます。
ファイル 808-3.bmp

つまり、柱の長さは短くなります。
部材の長さが短いほどせん断力は大きくなりますね。
Q=M/Lの関係です。これにより、せん断力が大きくなるため
短柱ではせん断破壊という脆性破壊(粘りの無い破壊、堰けるべき雑壁
形式)が起きます。
以上のように、雑壁というのはRC構造物にとって非常に面倒な存在です。
いっそのこと全て耐震壁とできればいいのですが、意匠上の理由から、
必ず開口ができる為、そうはいきません。前置きが長くなりましたが、
ここで重要となるのが「耐震スリット」です。
耐震スリットの意味は下図のように壁際に設け、
「柱と壁が繋がっていない状態にする」事にあります。構造的に言えば
「柱の剛性を大きくしないため」となります。
ファイル 808-4.bmp

上述で書いた、雑壁が取り付くことで発生した面倒な剛性の関係が、
耐震スリットを設けることで全て処理できます。
以上のように現在のRC建物では、ほとんどスリットを設けた建物とし
て設計されています。
これがスリットの意味です。こういった分からないことを調べると
また、モーメントとは何か?せん断とは何かと色々でてきます。
なので次回はモーメントについて投稿したいと思います。
ではこれで終えたいと思います。

関連記事

2024.04.25建築部
2024.04.24建築部
2024.04.23建築部